抑制の裏にある情念 息もできない

息もできない Breathless

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 さすがは「キネマ旬報」の外国映画ベストワンに選ばれるだけのことはある。
 これでもか、と情念をぶつけてくる圧倒的な迫力は韓国映画ならではだが、例えばパク・チャヌク作品のストレートさに比べると、この作品は感情表現も洗練されている。これまで見てきた韓国映画の、露骨に人間の姿をさらけ出す映像表現は強烈なインパクトを与え、反対に邦画の中途半端さが何とももどかしく感じられるほどだった。しかし、この作品では、露骨な表現だけではなく、抑制の効いた表現にも特長があるように思われる。取り立て屋のサンフンの激しい暴力も、女子高生ヨニの乱暴な言葉遣いも、その裏に彼らの抱えている苦悩があって説得力を高めているのだ。
 また、母親と妹を父親に殺された過去を持つサンフンと、母を亡くして痴呆の父親の面倒を一人で見ているヨニとが互いに惹かれ合うのだが、それを恋愛感情で処理してしまわなかったところもポイント。2人がお互いにもたれ合い、依存し合うのではなく、それぞれを心の片隅で支えにしながらも、自分自身で生きていこうとあがいているところが胸を打つ。ラストも決して我々が望むようには終わらない。因果応報の宿命から逃れることはできないのだ。残酷な結末ではあるが、後味は意外に悪くない。
 監督・脚本・主演を務めたヤン・イクチュンは、スクリーンの中ではどこから見ても立派な(?)チンピラ顔なのだが、特典映像で見る素顔は全然違う。これも演技のなせる技か。女子高生ヨニを演じたキム・コッピは、役柄的には「猟奇的な彼女」のチョン・ジヒョンと重なるところがあるが、難しい役柄を見事にこなしている。笑った表情が長澤まさみに少し似て、表情の豊かさが大きな魅力。
 これまで見てきた韓国映画では「母」をテーマに挙げたものが多かったが、これは珍しく「父」がテーマ。どこの国でも「父」より「母」の方が強いらしい。

作品データ
監督:ヤン・イクチュン 出演:ヤン・イクチュン、キム・コッピ他 製作年:2008年 製作国:韓国


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  • ■映画『息もできない Breathless』

    Excerpt: 韓国の俳優ヤン・イクチュンが私財を投じて製作した映画『息もできない Breathless』。 圧倒的な暴力の連鎖や、断ち難い呪縛であり絆でもある家族関係などを描いています。 <.. Weblog: Viva La Vida! <ライターCheese の映画やもろもろ> racked: 2011-03-09 07:05