原作の弱さと興ざめのボカシ 私の奴隷になりなさい

私の奴隷になりなさい ☆ 【BD】

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 サタミシュウの原作は、個人的にもう一つ足りないという感想。文章はそれなりにこなれているものの、主人公の「僕」の心情描写がくどく、男性の立場から読んでも感情移入しづらい。また、官能シーンにしても機械的描写というのか、抑揚に欠けてあまり感じるものがなかった。求めるところが違うのかもしれないが、フランス書院文庫やマドンナメイト文庫の方が(私にとっては)読み応えがあった。
 映画は話題の壇蜜が主演ということで興味と期待を持って見てみたが、まさに壇蜜だけの映画と言ったら言い過ぎだろうか。原作そのものの主題の捉えにくさに加え、わかりやすく映画化するために、板尾創路演じる「男」が単なる「調教師」として描かれるに留まり、原作以上にリアリティのない存在になってしまったのは残念。「百人の王国の王になることができる男ももちろんいる。しかしほとんどの男はそうなることはできない。百人の王国の下僕に成り下がって終わりだ。どちらが正しいのかどちらが面白いのかはわからないが、私は三人の小国の王になることを選んだだけだ」(サタミシュウ『私の奴隷になりなさい』角川文庫)などの部分を読んでみると、「男」と香奈の関係は非日常的というよりも日常的な世界に近いところで成り立っているように感じたのだが。
 一方、「僕」を演じた真山明大は、いかにも薄っぺな青年で、原作のイメージに近い。それゆえに映画でも「僕」には感情移入できず、そうかといって「僕」にも感情移入できない観客は宙ぶらりんのまま、壇蜜演じる香奈と付き合わなければならなかった。
 この作品の壇蜜は、私が勝手に思い描いていたイメージよりは知的で清楚な雰囲気もあり、好感が持てた。しかし、最近のバラエティなどでの彼女の売り出し方を見ていると、かつての黒木香のようにあまりに作られすぎたキャラクターがマイナスとなってしまうのではないかという危惧も感じる。原作では「僕」と香奈の最初の出会いの時点では「奴隷」などということは思いも寄らないのだが、香奈を壇蜜が演じるというだけで、妄想は勝手に膨らんでしまい、そこに「ギャップ萌え」はない。
 最後に、どうしてもこれだけは書いておきたい。あまりにも無粋で興ざめな修正(ボカシ)は編集し直すべきである。あえて80年代のエロ本、ビニ本の効果を狙ったとか、観客を笑わせようという意図なら納得できるが、作品全体を台無しにしてしまうような気がする。

作品データ
監督:亀井亨 出演:壇蜜、真山明大、板尾創路他
製作年:2012年 製作国:日本







私の奴隷になりなさい (角川文庫)
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サタミ シュウ

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