上海灘の完結編 ラスト・シャンハイ

ラスト・シャンハイ 大上海 THE LAST TYCOON ☆ 【DVD】

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 1930~40年代の激動の上海で、裏社会のトップに上り詰めていく男の物語。チョウ・ユンファの出世作であるTVドラマ「上海灘」を思い出させるが、この作品の青年時代の主人公チェン・ダーチーを2人1役で演じたホァン・シャオミンも、TVドラマ「新上海灘」でチョウ・ユンファと同じ役を演じていたので、これ以上のキャストはない。また、脇役にもサモ・ハンやフランシス・ン、倉田保昭などシブい俳優が固めている。ちなみに2人1役は主人公だけではなく、主人公の初恋の女性や妻なども同様で、NHKの朝ドラや大河ドラマ並みに凝りに凝って作られている。
 上海事変の前後をクライマックスにもってくる香港・中国映画は少なくなく、ここ2000年代に入ってからは2003年の「パープル・バタフライ」や2007年の「ラスト、コーション」などがあり、2010年の「シャンハイ」にはチョウ・ユンファも出演している。最近の傾向なのか、これらの作品では日本軍に同調する中国人(漢奸)の存在がきっちりと描かれ、一昔前の作品のように日本軍が一方的な悪役としては描かれていない。この作品でも上海事変は時代背景に過ぎず、時代の中でもがく人間の姿を描いているので、現代にも受け入れられる普遍的なテーマになっているような気がする。
 さて、この作品ではチョウ・ユンファとホァン・シャオミンが演じるチェン・ダーチーを始めとして、男が惚れる男たちと、彼らを支える健気で美しい女性たちが次々に出てくる。見ていて嫌なストレスが溜まらないのは、最初っからの悪者はいても、本当の意味での裏切り者がいないこと。どんな状況に置かれても、「忠義」を忘れない者たちがいるのだ。香港ノワールの伝統はこの作品でも十分に生きている。キャストもすばらしいが、20年以上の歳月を破綻なく描ききった監督のウォン・チン(バリー・ウォン)にも拍手を送りたい。何と彼はパロディ映画ばかりでなく、これだけ泣かせる映画も作れるのだ。若きダーチーたちとライバル組織との乱闘シーンでは銃を使わずに迫力あるアクションを見せ、上海が日本軍の空襲を受ける場面や日本軍の収容所から仲間を救い出す場面ではハデな爆破シーンを見せてくれた。私が一番好きなのはラストにつながる京劇のシーン。京劇を上演しながら仲間を救い出すとともに、裏切り者たちに復讐を果たす。当然、犠牲は少なくなかったが、これこそ香港映画の真骨頂! 日本軍が敵でもあるのに胸を熱くして見てしまった。
 現在の香港・中国映画のファンだけではなく、かつての香港映画ファンにも自信を持ってオススメできる作品である。

作品データ
監督:ウォン・チン 出演:チョウ・ユンファ、ホァン・シャオミン、サモ・ハン他
製作年:2012年 製作国:香港、中国


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TCエンタテインメント
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  • 「ラスト・シャンハイ」

    Excerpt: 「上海ノワール」ものは数あれど、「夢にまで見た」とか「待ちに待った」とかいう表現が相応しい作品。ストーリーや展開に目新しいものはないけれど、極上の魅せる作品に仕上がっているし。 この「ラスト.. Weblog: ここなつ映画レビュー racked: 2014-01-19 01:26