冒頭から涙! お帰り寅さん

はつらいよ50 お帰り寅さん 【フォーラム盛岡】

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 第1作公開から50周年を記念して製作された渥美清主演の国民的人気シリーズ「男はつらいよ」の最新作。新たに撮影された現在の映像に、4Kデジタル修復された寅さんの名場面が重ね合わされた総集編的な作品である。

 脱サラをして小説家になった満男(吉岡秀隆)は、中学3年生の娘ユリ(桜田ひより)と二人で暮らしている。6年前に亡くなった妻の七回忌が行われた柴又の「くるまや」では、母のさくら(倍賞千恵子)や父の博(前田吟)たちが昔話に花を咲かせていた。ある日、満男のサイン会が行われていた書店に、満男の初恋の相手イズミ(後藤久美子)が姿を現す。イズミは国連職員となり、海外で夫や二人の子どもと暮らしているが、ひさしぶりに仕事で来日し、偶然その書店に居合わせたのだ。満男はイズミを寅さんの恋人だったリリー(浅丘ルリ子)のジャズバーに連れて行き、お互いの近況と思い出を語り合う。

 私自身は満男に近い世代なのだが、学生時代に高速バスの車内で見た「男はつらいよ」のビデオからシリーズのファンとなり、第37作「幸福の青い鳥」からは劇場で見るようになった。ちなみに後藤久美子とは、学生時代に通学に利用していた京王線の明大前駅構内で3回ほどすれ違い、制服姿の彼女の美しさに衝撃を受けた経験があったので、第42作「ぼくの伯父さん」以降の満男とイズミの恋物語は、自分を満男に重ねて胸を焦がしながらスクリーンを見つめていたのだった。今回、20数年ぶりに新作が公開されると聞き、これは劇場で見なければと特別試写会に応募。一般公開前日、私よりも年配の人が行列を作った地方都市の映画館で懐かしい「くるまや」の人々と再会した。

 冒頭はお約束の夢のシーンから始まる。といっても、寅さんの夢ではなく、満男の夢であり、実質的に主人公が満男であることが示される。シリーズ後半での満男の存在感は寅さんに並ぶほど大きくなっていたので違和感はない。娘役の桜田ひよりも自然に「くるまや」の人々の中に溶け込み、あの当時と変わらない「男はつらいよ」の世界が始まった。満男の妻の七回忌の法要で一家が集まり、満男が寅さんのことを思い出すと過去の名シーンが巧みに挿入される。生き生きとした寅さんや若々しく可憐なさくらを見ているだけで私は泣き笑い状態。さらに満男がイズミと再会し、リリーのジャズバーを訪れる場面ではもう涙が止まらない。あくまでも寅さんは回想の中に出てくるだけなので、「新作」と称するには異論もあるだろうが、「男はつらいよ」のファンが満男をはじめとする登場人物と一緒に寅さんを回想する「仕掛け」は、山田洋次監督ならではといえる。寅さんを想って満男の視線が宙を漂うシーンがやけに多いのが気になったが、おそらくスクリーンを見つめる私たちも同じような表情をしていたに違いない。

 満男とイズミがどうなるのかが最大のポイントだったが、山田洋次監督はこれ以外にはない着地点を見つけてくれた。成田空港での別れのシーンは、「男はつらいよ」ファンの願望を叶える唯一のものだったという気がする。このあと満男とイズミが交わることはないのかもしれないが、例えば満男が編集者の節子(池脇千鶴)と結ばれる可能性もあるし、娘ユリの恋物語に満男たちが右往左往することも十分にあり得る。ファンがそれぞれに「男はつらいよ」の続きを想像する楽しみを残してくれた結末だったのだ。

 帰宅後、アマゾンに「ぼくの伯父さん」以降の後藤久美子出演作の4Kデジタル修復版を注文したので、年末年始は満男とイズミの恋物語に浸ることにする。

作品データ
監督:山田洋次 出演:渥美清、倍賞千恵子、吉岡秀隆、後藤久美子、前田吟他
製作年:2019年 製作国:日本

男はつらいよ お帰り 寅さん
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